LightUp Shopping Club
糸の奥から風合いを呼び覚ます、
〈マッセルバラ〉の「ブリーチ加工」。
連載第3回目は、〈マッセルバラ〉のダンガリー生地のブリーチ加工に着目。
静寂の中で生まれる“究極の青”。
その中に、職人の技術の真髄があります。
単に色を抜くだけではない、ダンガリーの表情を引き出す現場に迫りました。
フレックスジャパン
Hiroki Hirabayashi
創業80年以上の歴史を誇る老舗シャツメーカーの企画生産担当。素材選びから細部のディテールに至るまで、当社と二人三脚で形にしてきた開発パートナー。〈マッセルバラ〉アイテムにおいては、作り手のこだわりを形にするための仕様設計と技術監修を統括。
静寂の中で生まれる “究極の青”
シャトル織機から繋がるバトン。
シャトル織機を用いて時間をかけ、経糸に余計な負荷をかけず、緯糸を切らぬまま丹念に織り上げられた風合い豊かな生地。その生地が次に向かうのは、岡山県倉敷市児島に拠点を置く「美東有限会社」だ。
ここでは、ブリーチ加工が施される。すなわち「色を抜く」工程だ。インディゴに染め上げられた生地に薬品を作用させ、あの特徴的な、淡く抜けたような青をつくり出していく。
しかし、それは単なる脱色ではない。インディゴ染めの糸は芯まで染まっておらず、内側が白い。だからこそ、色が落ちるにつれて青の中に白が滲み出し、深みのある独特の表情が生まれるのだ。色を「消す」のではなく、色の「奥」を引き出す作業。それがブリーチ加工の本質だ。
薬品が作用するその間、現場には独特の静寂が流れる。職人は、たとえ電話が鳴ろうとも、声をかけられようとも、決して手を止めず、目の前の生地から意識を逸らさない。タイミングが1秒遅れるだけで、目指す色が消え去ってしまうからだ。この繊細な引き算を担うのは、機械ではなく、そんな静寂の中で研ぎ澄まされる職人の目だった。
デニムは「生きもの」である。
そう称される理由を、美東有限会社の工場長・小柴氏は「毎日まったく同じ状態にはならないから」だと語る。
色の抜け方を左右するのは、天候や気温、湿度といった気象条件。そこに釜ごとの水の回り方のクセなど、流動的な要素が複雑に絡み合う。同じレシピのもと、同じ時間だけ薬品を作用させても、昨日とまったく同じ色に仕上がることはない。だからこそ、マニュアルはあれど、それはあくまで「手順の骨格」にすぎない。その日、その瞬間の正解を導き出すのは、職人が経験の中で培ってきた鋭いまなざしである。
美東有限会社の営業・渡邉氏(左)、工場長・小柴氏(右)。
まなざしの真剣勝負
加工の工程と、緊張のあいだに。
ブリーチ加工には、決まった工程がある。しかしその工程の「あいだ」にこそ、職人の技術が宿っている。
世間ではよく「職人の勘」という言葉が使われ、ともすれば感覚的なものに聞こえる。しかし小柴氏が語るのはむしろ逆で、長年の経験によって研ぎ澄まされた「見る力」こそが技術の核心だということだ。色の抜け具合を、濡れた状態のサンプルと比較しながら、その都度、細かく調整していく。その目は、日々の積み重ねによってしか育たない。
極限の集中が生み出す青。
ブリーチ加工が難しいのは、「やり直しが効かない」という一点に尽きる。色を抜きすぎれば、もう戻らない。インディゴの青は消えていき、生地はただ白く褪せていく。そうなれば、あの深みある色調は二度と取り戻せない。だからこそ、ブリーチ加工は「1分1秒たりとも気を緩めることができない作業」だと、小柴氏は言う。
さらに難しいのは、同じメーカーの同じブリーチ薬品であっても、生産ロットが異なるだけで色の抜け方が変わる点だ。材料そのものが完全な均一ではない。だからこそ、レシピ通りに進めても、毎回同じ結果が出るとは限らない。
それでも職人は、その不均一さを目で読み、手で調整し、経験で補っていく。機械には決して代替できない領域が、確かにそこにある。速さでも、機械的な均一さでも、絶対的な再現性でもない。その日の気候や環境の変化を受け止めながら、経験によって研ぎ澄まされた目で色を見極めていく。マッセルバラのダンガリーの青は、そうしてしか生まれない “究極の青”なのだ。
効率だけでは決して実現できない、職人の技術とこだわり。 大量生産品にはない、手仕事ならではの温もりと「味」が、マッセルバラのシャツには宿っている。
ブリーチ後(左)、ブリーチ前(右)
※「大人のブリーチドダンガリー七分袖シャツ/レディス」と「大人のブリーチドダンガリー七分袖シャツ/メンズ」の比較です。
おすすめコーディネート
当社スタッフによる、〈マッセルバラ〉のコーディネートをご紹介いたします。
Next Issue
〈マッセルバラ〉制作陣による特別対談
「マッセルバラのダンガリー制作秘話。」
次回は、当社のマーチャンダイザー北沢と、フレックスジャパン平林氏によるコラボトーク。
ダンガリー企画の制作秘話をお楽しみに。

Miss Kyouko/ミスキョウコ
【特集】〈セイコー〉マウリッツハイス美術館公認フェルメールオマージュウオッチ
Salon de GRANDGRIS
【特集】三國清三のまかない飯 12ヵ月頒布会


